ビジュアルIVRの導入を自社開発で実現した話

この記事は 弥生 Advent Calendar 2022の12日目の記事です。

はじめに

弥生株式会社の石原です。 CRMチームのエンジニアとして、弥生が自社運営しているカスタマーセンター(コールセンター)向けのCRMシステムと音声系システムの運用保守を担当しています。

今回は、弥生のIVRの課題解決に向けて導入したビジュアルIVRと、その中で得た学びの話をします。

ちなみに昨年の弥生 Advent Calendar 2021では音声系システム担当として参画したオフィス移転で得た学びの話をしていますので是非ご覧ください。

IVRとビジュアルIVR

IVR

「Interactive Voice Response」(自動音声応答)の略で、自動音声ガイダンスでメニュー選択を促し、プッシュ番号で電話の着信先を振り分けるシステムです。

ビジュアルIVR

自動音声ガイダンスではなく、スマートフォンの画面にメニューを表示することで、視覚的にメニュー選択をするIVRです。
音声ガイダンスを簡潔に整理した内容を可視化することで、音声ガイダンスを最後まで聞く必要がなく、短時間かつ正確にオペレータ窓口に繋げることができます。また、FAQコンテンツに誘導し自己解決を促すことができるというメリットがあります。

弥生のビジュアルIVR

導入経緯

弥生製品や提供サービスの増加に伴い、弥生のIVRは複雑化しています。
そのため、以下の課題があり、顧客の不満やストレスにつながっています。
・音声ガイダンスを最後まで聞くのに時間がかかる
・番号入力の手間がかかる
・音声ガイダンスのみでは理解が難しく、意図しないメニューを選択してしまい、別窓口のオペレータに電話が繫がり希望するオペレータ窓口に転送される

さらに、弥生は年末調整や確定申告時期は電話問い合わせが急増し、オペレータ窓口が大変混雑するため、オペレータに繫がるまでの待ち時間が長くなります。
その中で意図しない別の窓口に繋がり、転送されるとオペレータに繫がるまでの待ち時間がさらに長くなり、さらなる不満やストレスにつながってしまいます。

そこで課題解消に向けて以下を実現するため、ビジュアルIVRの導入を検討しました。
・メニューの可視化によるIVR操作の不便さ(時間がかかる、手間がかかる、選択肢を誤る)の解消
・FAQコンテンツの提供によるオペレータ窓口の混雑緩和

自社開発経緯

まずは弥生のIVRの一部をビジュアルIVRで可視化することを前提に検討を進めました。
今現在、様々なビジュアルIVRサービスがありますが、弥生では以下の理由により、市販のビジュアルIVRサービスを利用したパッケージ開発を自社で行うことにしました。
開発に利用したサービスには様々な機能のコンポーネントが用意されており、実行したい処理にあわせてコンポーネントを組み合わせることで実装をすることができます。

・弥生のIVRを可視化したい
既成のビジュアルIVRサービスでは画面構成に制限があり、弥生の音声IVRの可視化が実現ができませんでした。
さらに今後の提供範囲の拡大やIVRの改善を考えると自由度を高くする必要がありました。

・ビジュアルIVRのURLをスムーズに提供したい
既成のビジュアルIVRサービスを利用するとビジュアルIVRのURLをSMS送信するために電話番号の入力を求める必要があり、入力の手間を省くという目的が達成できません。
そのため、SMSプロバイダと契約し弥生の音声IVRに着信があった発信電話番号に対してSMS送信する仕組みが必要でした。

・ビジュアルIVRのFAQコンテンツで課題解決できなかった場合はオペレータに電話を繋ぎたい
FAQコンテンツだけでは課題解決が難しく、オペレータに電話を繋ぎたい場面があります。
弥生ではスムーズな電話対応を実現するため、オペレータに電話が繋がると同時にIVRで取得した顧客情報をオペレータのPC画面に表示します。
既成のビジュアルIVRサービスを利用すると、オペレータに電話を繋げたとしても電話対応が顧客特定から必要になるのため、スムーズな電話対応を実現できません。
そのため、通話状態を維持しつつ、IVRで取得した顧客情報をビジュアルIVRに引継ぎオペレータに電話を繋ぐ場合は、引き継いだ顧客情報を利用する仕組みが必要でした。

処理概要

開発をしてみて

・良かったこと
自分自身にとって今回の開発は新しい技術に触れることができる機会だったので楽しみでしたし、チャレンジできることも嬉しかったです。
音声IVRからビジュアルIVRを経由しオペレータに電話が繋がるまでの一通りの処理が初めてできたときは感動しました。

・苦労したこと
開発用パッケージソフトは海外製なので、英語のマニュアルと格闘しつつ開発を進めました。
社内のノウハウもなかったので、マニュアルやネットで調べても解消できなかった疑問はサポート窓口にメールをしていました。
サポート窓口担当も海外の方なので時差の影響で1日1往復のやりとりしかできず、解決に時間がかかり、なかなか開発が思うように進みませんでした。

・意外と苦労しなかったことと得た学び
開発する前は、ビジュアルIVRに対する電話の呼情報のインターフェースを実装することに苦労するかもしれないと思っていました。
ですが開発してみると開発ソフトが優秀で苦労することなく実装できました。
(インターフェース用のコンポーネントが用意されていて各値をはめ込むだけでした)
何気ないところから、サービスを提供する身として「大変なことをいかに簡単にして提供することができるか」ということを改めて思い知った瞬間でした。

ビジュアルIVR導入の効果

・ビジュアルIVR導入により一定の効果を得ることができた
導入後は1日平均で25件ですが、ビジュアルIVRから提供するFAQコンテンツでお問い合わせの課題を解決いただけています。
※25件という件数はオペレータ1.25人分の働きです

・個人的にはやり切った充実感がとても大きかった
わずかではありますが、オペレータ窓口の混雑緩和に貢献できていることが嬉しかったです。
また、1つのサービスを0から作り上げたことの充実感と喜びがとても大きかったです。実績を積めたので自信もつきました。

これから

・ビジュアルIVRの課題もある
ビジュアルIVR利用の内、約75%はオペレータへの転送を選択、もしくはFAQコンテンツまでたどり着かずビジュアルIVRを途中で閉じている状態です。
より自己解決を促すことができる利用しやすいサービスに改善が必要だと考えています。

・対応範囲を広げたい
前述のとおり、今回導入したビジュアルIVRは、弥生のIVRの一部です。
ビジュアルIVRの対応範囲を広げることでより高い効果を出しIVRの課題解消に貢献したいです。

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