デザインをどう伝え、どう表現するか ~グッドデザイン賞応募を通して見えたこと~

この記事は 弥生 Advent Calendar 2025 の19日目の記事です。

プロダクトデザイナーの "1000old" です。

昨年の Advent Calendar では、「弥生会計 Next」のデザインプロセスを言語化してみました。 その後、2025年4月に「弥生会計 Next」は正式リリースを迎え、さらに10月には「2025年度 グッドデザイン賞」を受賞しました。

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グッドデザイン賞は、一般的にマーケティング部門が主導して応募するケースが多いようですが、弥生ではマーケティング部門のサポートを受けつつプロダクトデザイナーのチームが中心となり、私がリーダー的な立場で応募プロセスを推進しました。

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受賞までの詳細な経緯については上記「弥生 公式note」をご覧いただくとして、本稿では、プロダクトデザイナーとして応募を担当したからこそ見えた「デザインの伝え方」、マーケティングとデザインの2つの視点が交わった「表現のあり方」を振り返ってみます。

デザインをどう伝えるか

グッドデザイン賞では、特に一次審査においてデザインをさまざまな形で「伝える」ことが求められます。

  • デザインのポイント(50文字 ✕ 3項目)
  • デザインが生まれた理由/背景(400文字)
  • デザインを実現した経緯とその成果(400文字)など

これらの項目は、まずプロダクトデザイナーが言語化し、その後マーケティング部門がブラッシュアップする流れで進めてきました。その過程で、同じ「伝える」という言葉でも、両者の視点が異なることを実感しました。

マーケティング視点の「伝える」は、プロダクトやサービスの意義を、ブランドや組織の姿勢とともに社会的文脈に乗せて発信することです。広く「共感」を生み出し、社会の中でプロダクトの立ち位置を明確にしていく行為です。つまり、「デザインをどう見せるか」を意識したコミュニケーションの設計です。メッセージを受け取る側の感情を動かし、ブランド体験としてのデザインを語ることが重視されます。

※ 弥生入社前、私自身がWebディレクターとしてマーケティング寄りの業務に携わっていた経験からの解釈も含まれます。

一番わかりやすい事例がプレスリリースではないかと思います。

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一方で、デザイナー視点の「伝える」は、ユーザー体験や行動設計、利用文脈や判断の背景など、細部の構造を論理的に言語化し、なぜそのデザインなのかを説明することです。感情ではなく、意図と構造を明確にして理解を促す行為です。「デザインをどう見せるか」ではなく、「なぜこのデザインであるか」を掘り下げる作業です。

最初のうちは、この「共感(デザインをどう見せるか)」と「理解(なぜそのデザインなのか)」の間に明確なギャップがありましたが、作業を重ねる中で、それぞれの視点を相互に理解できるようになっていきます。

  • マーケティングで社会的な文脈で共感を引き寄せる
  • デザイナーがデザインの根拠を明確にして理解を支える

両者が相手の思考を補完し、視点を融合していくことで、「デザインを伝える」という作業がよりスムーズに、一貫性を持って進むようになりました。

デザインをどう表現するか

一次審査の準備では、「共感」と「理解」の2つの視点が融合し、「デザインの伝え方」の方向性が見えてきましたが、次の段階ではどのように「デザインを表現するか」を模索しました。

グッドデザイン賞の審査では、「人間的」「産業的」「社会的」「時間的」という4つの視点からデザインが評価されます。

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マーケティング、デザインの視点、審査の視点を重ねて整理したところ、以下のような関係が見えてきました。

審査の視点 マーケティングの視点 デザインの視点
人間的視点 プロダクトの魅力をブランドの言葉で発信する 実際の利用文脈を踏まえ、ユーザー体験設計の意味を示す
産業的視点 プロダクトや事業の意義、新しさを発信する 機能・UI構造・設計の仕組みを具体的に説明する
社会的視点 社会における意義や組織の立ち位置を明確にする ユーザーが求める具体的な課題解決方法を示す
時間的視点 ブランドのビジョンや成長の方向性を提示する ユーザー体験の継続的な改善や、中・長期的な価値を提案する

審査の視点に対応するには、マーケティング、デザインの一方の視点だけでは成立せず、両方をバランスよく表現する必要があります。この整理を踏まえ、一次審査・二次審査の対応を進めていきました。

一次審査向けの資料を仕上げる中で、最も時間を費やしたのは言葉と構成のトーン調整でした。

  • 伝わりやすい表現にしすぎると、設計の意図が理解されにくい
  • 正確に説明しすぎると、難しすぎて共感が得づらい

何度も議論を重ねる中で「共感」と「理解」の両方の視点が備わり、見た目だけではなく思想まで含めて社会に届き、かつ「弥生らしいデザイン」の中身が伝わる構成に整いました。

この内容は、グッドデザイン賞の「弥生会計 Next」紹介ページにも反映されていますので、ぜひご確認ください。

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二次審査は、審査員が実際にプロダクトに触れながら評価を行います。ここでは、言葉よりも体験そのものが説得力を持ちます。ここでも、発信するメッセージや視点に合わせて作業分担を行いました。

  • マーケティング部門は、プロダクトやブランドを説明するパネルを担当
    → 見た瞬間に「どんな価値があるか」が伝わる
  • デザイナーは、プロダクトを実際に操作できる体験導線を設計
    → 触れたときに「なぜそう設計されたか」が理解できる

説明順序や文言、デモとの連携、スムーズに見てもらえる配置など、細部まで調整を重ね、「共感」と「理解」が同じ体験の中でつながる展示が完成しました。

完成したブース(許可を得て撮影・掲載。一部加工しています)

視点が交わり、かたちになる

グッドデザイン賞への応募は、単に受賞を目指すための活動ではなく、自分たちのデザインをどう社会に伝えるかを改めて考える機会となりました。

マーケティング視点の言葉がデザインの構造を社会につなぎ、デザイン視点の説明がマーケティングの言葉に深みを与える。

この2つの視点が融合したことで、デザインが社会に届く「かたち」になったことは、弥生にとって非常に大きな成果でした。

「共感(デザインをどう見せるか)」と「理解(なぜそのデザインなのか)」という視点は、グッドデザイン賞の応募という枠を超えて、今後のプロダクトづくり全体を支える考え方の軸になっていくと感じています。

今後もこの両方の視点を意識しながら、変化し続ける社会の中で、「弥生らしさ」のあるデザインを育てていきます。

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弥生のエンジニアに関するnote記事もご覧ください。
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