この記事は 弥生 Advent Calendar 2025 の23日目の記事です。
AI・データ戦略部の大塚です。
2024年11月下旬、ロンドンで開催された Personalisation Summit / Generative AI for Marketing Summit に現地参加してきました。

私は普段から
- 顧客データの統合
- マーケやCSとの横断連携
- AI活用の検討
といった業務に関わっており、パーソナライゼーションやAI活用は弥生にとって重要なテーマとなっています。
今回は、特に パーソナライズ・CX(顧客体験)・AIの役割分担・データ活用・組織の在り方 に関するセッションを中心に参加しました。
本記事では、私自身が現地で感じたことや、特に「弥生として活かせる」と思ったポイントをまとめています。 パーソナライズやCXに取り組む方の参考になれば嬉しいです。

Personalisation Summitとは
欧州の金融、小売、通信、メディア企業が集まり、 データ・AI・CX・パーソナライゼーションの最新動向を共有し合うカンファレンスです。
日本よりも GDPR(個人データ保護)や CX/Personalisation の成熟度が高い地域でもあり、 「顧客体験をどう作るべきか?」の議論レベルが非常に高いのが特徴でした。
参加者はマーケティング担当者やマーケティングデータ担当者が多く、 非常に実務的な内容が多いのが印象的でした。
今回特に印象に残った3つの学び
① Personalisation は、瞬間の文脈(Moment)を理解すること
これまで「業種別セグメント」や「行動パターン分類」がパーソナライゼーションの中心でしたが、 これからは「瞬間の文脈」が中心にくる、というような話でした。 WEB・SNSなどのGAFAではある意味既に実行されているかとは思いますが、 それがリアル世界にも、及んでくるという話です。
顧客が「いまこの瞬間」どんな状況・迷い・感情にあるかを理解し、最適な介入をすることが本当のパーソナライズ
弥生でいえば:
- 仕訳エラーが続いて焦っている
- 月末で処理が溜まっている
- 初めて確定申告に挑戦して不安
- 久々のログインで使い方を忘れている
- 納期限が迫って落ち着かない
こうした 「個々の瞬間」 の理解こそが、UXと継続率を最も左右するとのことでした。
弥生に置き換えると、利用には迷う瞬間が非常に多く存在するため、ここに介入できると大きな価値になると感じました。

② Personalisationの本質は「人間理解」。AIはそれを支える加速装置である
AI活用の話題は盛り上がっていましたが、驚くほど共通していたのが、 AIより先に、人間(顧客)の深い理解こそが最重要。 という姿勢でした。
Marley Spoon の事例では、 顧客の感情を理解し、適切なタイミングで適切な声かけをする という「人間的理解」がLTVを40〜45%押し上げるとのこと。
そのうえで AI は以下のような形で“拡張”として使われていました:
- 顧客行動ログからパターンを抽出
- 文脈に合わせたメッセージの自動生成
- 顧客ごとの「詰まりポイント」を検知
- 体験を個別最適化する仕組みの自動化
つまり、
AIが主役なのではなく、 パーソナライゼーションの精度を上げるためのブースターに過ぎない。 という点が非常に印象的でした。
AIで文章を作るだけでは本質的価値は出せず、 弥生が蓄積している顧客理解 × AIの補助が正解だと感じました。
③ AIの価値は“自動化による高速PDCA”にある
多くの企業が口を揃えていたのは、 SOP(標準業務プロセス) × A/Bテスト × PDCA は昔から変わらない。 しかし AI によって、そのサイクルのスピードと精度が桁違いに上がる。 ということです。
AIが何をするかというと:
- テキスト・画像・UI文言など数百パターンを一瞬で生成
- テストを自動実施し、有意差のある案を提示
- データを分析し、“次に改善すべきポイント”をレコメンド
- 成果測定も自動化される
つまり、 AIで「作る・測る・直す」が同時多発的に回り始める。 結果として、組織の改善速度が10倍になる。
パーソナライゼーションとは華やかなものではなく、 ひたすら改善し続ける地道な運用の積み重ねだという点も非常に実務的でした。
弥生もこの方向で AI を活用するのが最善だと強く感じました。

弥生として今後活かしたいポイント
① “瞬間理解(Moment-first)” を前提に、プロダクトとコミュニケーションを再設計する
Summitでは、モバイル側(エッジデバイス)で行動ログを取り、インテント(行動メタ情報)にして、 マーケティング側では個人を特定せず、そのインテントを検知して施策を打つ、という、 新しいアプローチが紹介されていました。
そうすることで、ユーザーの行動の「瞬間」をとらえて、アクションが起こせます。
WEB広告やサイトのトラッキングでは同じように実施されつつありますが、
- エラーや迷いの検知
- 契約や購入の検討タイミング、解約を考えているタイミングのフォロー
- よくある挫折ポイントを文脈化してガイド
- UIの流れやナビゲーションも“瞬間”ごとに調整
同じユーザーでも、状況によって必要なサポートは大きく変わるため 製品やサポートサイト側とも連携しながらリアルタイムでの人・AIのアプローチが重要になると感じました。
② 業務(SOP)・プロセス・データ構造を整備し、チャネル横断で連携できる基盤をつくる
パーソナライゼーションは“特定部署の取り組み”ではありません。 セッションでは、
“業務定義 × プロセス設計 × データ統合” この3つが揃わない企業はパーソナライズができない
という話が何度も登場しました。
具体的には:
- SOP(やり方)を定義し、全チャネルで共通化
- Web、アプリ、メール、サポートが同じ顧客状態を参照
- CSログ・行動ログ・エラー履歴・業種情報を一元管理
- プロダクト → CS → マーケ の改善サイクルを一本のデータで回す
私たちもマーケティング、セールス、サポートが様々なチャネルで同じお客様に対してアプローチしているため、 業務定義とデータの標準化・接続性がやはり重要になると感じました。
③ AIは“案内と改善”に集中させ、判断はユーザーに残す設計へ
会計・税務は誤情報のリスクが極めて大きく、 AIに答えを出させるのは法律としてもNGですので、そこはすべてを任せられません。
今回のセッションでも 航空・医療・金融など高リスク領域では AIはガイド役に限定することが常識になっていました。
弥生も以下のような運用が適切だと感じました:
- 判断はユーザー or 人間サポート
- エラー・困りごとは AI→人 のスムーズなエスカレーション
- 逆に AI は「改善の高速化」には積極活用(文言生成・A/B実施・分析・提案)
安全性と効率性のバランスをどう取るか、やはり世界的に見ても苦労している部分かと思いました。
④ 弥生ブランドの「人格(Personality)」を定義し、UXを一貫させる
AI活用が進むほどブランドの「人格」が差別化要素になるという話が印象的でした。
弥生が提供している価値は長年にわたる信頼だと思っております。 「不安をなくす」「難しさを噛み砕く」「寄り添う」ことで、 幅広い多くのお客様に親しみを持って利用してもらうことができています。
これからのAI活用の中でも、
- AIアシスタント
- UIの文言
- サポートのトーン
- メール・通知
- ヘルプページ
すべてで一貫させることで、「安心できる体験としての弥生」 を強化できると感じました。
まとめ
今回のSummitを通じて、 パーソナライゼーションやAI活用は「技術だけ」の話ではなく、 顧客を深く理解し、それを組織・プロダクト・プロセスにどう実装するかの話 であることを改めて強く感じました。
特に、
- 文脈理解(Moment-first)
- SOPとプロセスの標準化
- データの統合
- AIによる高速PDCA
- ブランド人格の一貫性
- 安全性と透明性の確保
は、弥生が今後さらに進化していくうえで欠かせない要素だと考えています。
今回は多くのセッションを通じて「世界の先端がどこに向かっていて、現実的にどこまで進んでいるか」を肌で感じられ、 学びの多い参加となりました。
データ統合、活用、DX推進の文脈で、マーケティング・セールス・サポートの業務と連携し、 まだヨーロッパの企業でもできていない取組を、弥生でもかなえていきたいと思います。




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