- なぜ今、オフラインなのか:オンラインの「形式化」問題
- 圧倒的な「グルーヴ感」と「アドリブ」の価値
- 3ヶ月の文脈を可視化する「タイムライン」手法
- 「書けない」問題はAIで解決する:Gemini活用フロー
- まとめ:ハイブリッド時代のチーム戦略として
エンジニアの関口です。先日、所属しているチームで対面で集まる機会があり、この機会にチームの振り返りを対面形式で行いました。 普段はリモートワークで「ふりかえり:レトロスペクティブ」をオンラインで実施していますが、オフラインで実施したことで、オンラインでは得られない学びや気づきがありました。その経験をブログで紹介します。
なぜ今、オフラインなのか:オンラインの「形式化」問題
リモートワークが定着し、スクラムのレトロスペクティブ(振り返り)もオンラインで行うことが当たり前になりました。しかし今回、あえて 「チーム全員で、オフラインで、ホワイトボードを使って」 振り返りを実施しました。
結論から言うと、これは単なる「回帰」ではなく、 「アナログの熱量」と「デジタルの効率(AI)」を組み合わせた、新しいチーム改善のアプローチ だと感じました。
本記事では、エンジニア視点での気づきと、マネジメント視点でのチームビルディングの効果、そして Geminiを活用した議事録 についてまとめます。
オンラインの振り返りは効率的ですが、Zoomなどのツール越しでは「1人が話す間、他はミュート」という構造になりがちです。これでは議論が整いすぎてしまい、まるで「講演」や「報告会」のようになってしまう課題を感じていました。
特にオンラインでは、通信ラグや発言の被りを避ける心理が働き、どうしてもメインで喋る人がマイクを占有し続ける傾向があります。
しかし、オフラインでは相手の息遣いや「あ、今言いたそうだな」という空気感が非言語情報としてダイレクトに伝わります。 これにより、意図的にメンバーが話しやすい「間(ま)」を作ることで、ハンドリングが格段にスムーズになりました。
物理的な空間共有が、結果として特定の人の独走を防ぎ、「誰でも発言しやすいタイミング」を自然に作り出すことができました。
圧倒的な「グルーヴ感」と「アドリブ」の価値
物理的に集まったことで、その場の空気が一変しました。

ホワイトボードを囲むことで、議論の参加障壁が下がり、発言量が格段に増えた。
誰かの発言に「それってあの時のことか」と即座に反応したり、身振り手振りを交えたりすることで、会話のキャッチボールが高速化します。この「グルーヴ感」や、脱線から生まれる「アドリブの気づき」こそ、オフライン最大のROI(投資対効果)です。
3ヶ月の文脈を可視化する「タイムライン」手法
今回は3〜4ヶ月という長期間を対象に 「タイムライン」 手法を用いました。
タイムライン振り返りの一般的な進め方
タイムライン形式の振り返りは、通常以下のようなステップで進めます。
- 横軸に時間をとる: ホワイトボードに期間を時系列で配置する
- 事実の棚卸し: 実際に起きた出来事を付箋に書き出し、時系列に沿って貼っていく
- 感情の可視化: モチベーションや雰囲気の変化を曲線や付箋で表現する
- 因果関係の分析: 事実と感情を照らし合わせ、Whyを深掘りする
- アクションの決定: 学びを次のアクションに変換する
実際の進め方:一気に書いて、後から議論する
今回の実施では、一般的なステップバイステップの進め方ではなく、「まず一気に書き出す」 アプローチを採用しました。
最初の10〜15分: 全員で一気に付箋を書いて張っていく
- 事実(黄色の付箋)と感情・課題(ピンクの付箋)を同時に書き出す
- 記憶に頼りながら、思い出せる範囲でどんどん貼っていく
- この段階では深い議論はせず、とにかく「出し切る」ことに集中
その後の議論: 貼った付箋を見ながら、それぞれを順に見ていく形で議論を進める
- 月単位で振り返ると、書き忘れていたことが次々と出てくる
- 話していくうちに記憶が連鎖的に蘇り、新しい付箋が追加されていく
- この段階で、事実と感情の因果関係や、チームの調子の波が見えてくる
この「まず発散、後から収束」の流れにより、最初は思い出せなかったことも、月単位で振り返ることで記憶が連鎖的に呼び起こされ、より包括的な振り返りができました。
事実(黄色)と課題・感情(ピンク)を時系列で整理。記憶が連鎖的に蘇る。
期間が長いと細かい文脈を忘れがちですが、この手法なら「あそこで流れが変わったよね」とチーム全員で認識を同期(アライメント)できます。これは組織の学習サイクルを回す上で非常に有効でした。
「書けない」問題はAIで解決する:Gemini活用フロー
久しぶりのオフラインで痛感したのは「漢字が書けない(PC慣れしすぎている)」ことと、「ホワイトボードの内容をデータ化するのが面倒」という物理的なデメリットです。
しかし、現在はここを生成AI(Gemini)で大きくカバーできます。今回は以下のフローで「アナログのデジタル化」を行いました。
具体的な手順
- 撮影: 議論が終わったホワイトボードをスマホで撮影する。
- アップロード: その写真をGemini(またはChatGPT等)にアップロードする。
- 解析: プロンプトを投げて、Markdown形式でテキスト化させる。
実際に使用したプロンプト例
実際に私がGeminiに指示した内容は以下のようなものです。
あなたは優秀なスクラムマスター兼書記です。 添付したホワイトボードの画像を解析し、以下の要件で振り返りの議事録を作成してください。 ## 要件 1. **タイムラインの整理:** 時系列に沿って、どのようなイベント(黄色い付箋)があったか箇条書きにする。 2. **課題の抽出:** ピンク色の付箋に書かれている「課題」や「ネガティブな感情」をリストアップする。 3. **決定事項:** 青色の付箋や、ボードの右側に書かれた「ネクストアクション」をMarkdownのチェックリスト形式にする。 4. **読み取れない場合:** 文脈から推測するか、「(判読不能)」と記載する。
これだけで、手入力なら30分かかる転記作業が数秒で終わります。「アナログで発散して、デジタルで収束させる」。このフローが確立できたことで、オフライン開催のハードルが劇的に下がりました。
以下が出力された結果になります。
タイムラインで行うことで、月単位での振り返りをグルーピング化して学び・ネクストアクションへの繋がりを整理してもらうことができました。 また、音声での録画も行いつつさらに振り返りの解像度を拾い上げることができした。 オフラインでもデータがあることで、AIとの親和性を高めていく一つのやり方を見出せました。
## 1. タイムライン(出来事・事実) 時系列に沿って、主なイベントや実施事項(主に黄色・白の付箋や書き込み)を整理しました。 ### 2025年 10月 - xxx - xxx - モックアップ作成: Figma Makeを使ってモックアップを作成 ### 11月 - ドキュメント: 仮説キャンバスを作成 ### 12月 - 研修の実施 - xxxx ### Next Action - xxxx
まとめ:ハイブリッド時代のチーム戦略として
オフライン振り返りは、単なる親睦会ではなく、チームのモチベーションを高める起爆剤のような効果があると感じました。
それぞれの役割で、ハイブリッドならではの効果があります。
- エンジニア: 普段言えない本音や技術的な悩みを「アドリブ」で共有できる
- マネージャー: チームの隠れた課題を発見し、AI活用で運用コストを下げる
「グルーヴ感」はオフラインでしか得られない栄養素です。
普段はオンラインで効率的に進めつつ、定期的にオフラインで振り返りを実施することで、新しい角度や解像度を高め、モチベーション向上につながる効果があると強く感じました。
「アナログの熱量」と「デジタルの効率(AI)」を組み合わせた、ハイブリッドなチーム運営 が、いま最も強いアプローチではないかと考えています。



www.yayoi-kk.co.jp
弥生のエンジニアに関するnote記事もご覧ください。
note.yayoi-kk.co.jp