音声系システム担当のカスタマーセンター移転で得た学びの話

この記事は 弥生 Advent Calendar 2021 の21日目の記事です。

はじめに

弥生株式会社の石原です。
情報システム部のCRMチームに所属しています。

弥生は、札幌と大阪にカスタマーセンター(コールセンター)があり、CRMチームはカスタマーセンターの業務システムの導入支援・開発・運用保守を主に担当しています。
私は、CRMチームの中で主に音声系(テレフォニー・自動応答系)システムの担当をしています。

ちょうど1年前の年末年始期間中(2020年~2021年)に「お客さまへの安定したサポート体制と従業員が働きやすいオフィス環境づくりを目指す」というコンセプトのもと、札幌オフィスを移転しました。

今回は、音声系システム担当としてオフィス移転に携わり、普段と違った業務の中で、大変だったこと、学びになったことをお話します。

今回移転対象となった札幌カスタマーセンターは、400席を超える規模の大きいカスタマーセンターです。
私は、音声系システム担当としてアプリケーション側の業務を主に担当していて、オフィス移転の実務は未経験でした。
(大阪カスタマーセンターは2016年5月にオフィス移転をしていますが、私は参画していませんでした。)

オフィス移転プロジェクト開始前、私は漠然と以下のような移転作業を行うイメージでした。
1. 旧オフィスで業務が終了したら機器の電源を落として新オフィスに運ぶ
2. 新オフィスでは回線開通工事をしておいて、運んだ機器を設置する
3. 設置した機器の電源入れてテストしておわり!

ですが、実際やってみるとそんな簡単な話ではありませんでした。
様々な点で考慮する必要がありましたので、その点をお話していきます。

移転作業の方針・プロジェクトとして考慮すること

今回の移転プロジェクトでは音声系システムに限らず、移転プロジェクト全体で以下の2点を考慮する必要がありました。

  • 移転作業が年末年始期間中であること
    年末年始期間中のため、引越業者やシステム担当ベンダーの稼働日が限られ、移転作業も出来ることが限られました。移転作業は、ただ引越作業をするだけでなく、何か問題が発生したときの対処も含みます。
    そのため、移転先の新オフィスに「可能な限りシステム環境を整えて事前にテストを行う」という方針で進めることが決まりました。
    事前テストは2020年12月上旬開始ということも決まり、音声系システムも事前テストに合わせて環境を整えることになりました。

  • 新オフィスの引き渡しから営業開始日までの期間が3か月であること
    新オフィスの引き渡しは2020年10月で、新オフィスの営業開始日は2021年1月です。
    電話回線の開通工事に必要な、電源やサーバーラック設置などの電気設備工事はすべて、新オフィス引き渡し後の10月から着手で、完了が事前テスト開始直前の予定でした。
    そのため、事前テスト開始直前は、音声系システムだけでなくシステム系すべての回線開通工事とサーバー機器設置工事が立て込むことが想定され、各システム担当で密に連携をとりながら工事日を調整する必要がありました。
    システム工事以外である什器搬入や内装工事、空調設備工事も新オフィス引き渡し後の10月からの開始なので、移転プロジェクトはすべての作業が非常にタイトなスケジュールで進んでいきました。

私のタスク

今回のオフィス移転で、私は以下の4つのタスクを担当しました。

  • 電話回線の移転契約
  • PBX(電話交換機)の構成と番号設定の設計
  • 通話録音環境の構成と録音設計
  • 電話機・ヘッドセットの機器選定

また、オフィス移転はシステム設計課題の改善や機器更改のチャンスなので、課題の改善を意識しながら作業を進めました。

電話回線の移転契約

まずは旧オフィスの電話回線契約内容と実機の確認を行い、旧オフィスの電話回線の契約内容と機器構成を完全に理解するところから始めました。
その上で新オフィスに必要な環境と、旧オフィスの回線契約をどうすべきかを考えました。
「可能な限りシステム環境を整えて事前にテストを行う」ため、新オフィスで必要な回線をすべて新規契約で開通させて、旧オフィスの業務終了後に番号ポータビリティを行いました。

PBXの構成と番号設定の設計

ハードウェアの更改と、旧オフィスの複数回の増床により煩雑になっていた社内の内線番号と転送設定の最適化を行いました。
担当ベンダーとの密な連携で特に大きな問題もなく作業を進めることができました。

通話録音環境の構成と録音設計

旧オフィスは、通話録音の際に電話機と電話機設置エリアに依存関係がある課題がありました。
オフィス移転のタイミングでどの電話機をどのエリアに設置しても通話録音ができるように改善しました。

電話機・ヘッドセットの機器選定

旧オフィスの増床のたびに追加購入していたので機種の統一ができておらず、古いものも継続して利用している状態でした。
利用する側は席によって電話機が違うため不便さがあり、私のように機器管理する側は統一出来ていないことによる保守性の低さが課題としてありました。
「従業員が働きやすいオフィス環境づくりを目指す」というコンセプトのもと、新オフィスでは気持ち良く仕事ができるように400席分新品購入することとしました。

大変だったこと

移転プロジェクトが未経験で、一つ一つが挑戦で大変ではあったのですが、その中でも特に印象に残っている大変だったことが3つありました。

電話回線契約の取りまとめが完了し発注目前の段階で見積金額に誤りがあり、費用が増額することが発覚したこと

電話回線契約の内容を決めるまでに時間がかかっていたため、事前テストに間に合うように電話回線開通するための発注期限が迫っている状況でした。 発注期限が迫っている状況と予算の範囲もあって焦ってしまい、費用を抑えることができる別の契約内容を再検討することも考えましたが、「お客さまへの安定したサポート体制」と「可能な限りシステム環境を整えて事前にテストを行う」という方針のもと契約内容を変更せず費用増額で社内調整を実施しました。調整の結果、費用増額での発注も承認され、契約内容を変更せずに進めることができました。

発注した400台の電話機が、納品前に突然販売停止となり、在庫もない、追加製造予定もないことが発覚したこと

製造メーカーに在庫も追加製造予定もない以上、発注した電話機と同じく、ヘッドセットとの互換性や必要機能を満たす別機種を再発注する以外に手はありませんでした。
今回はその別機種の在庫があり、無事400席分の新品購入を実現できました。

ルーター/ゲートウェイの設置工事日に、サーバールームの電源・サーバーラック設置工事が完了していないことが発覚したこと

電話回線は、開通工事日までにアクセス工事・ルーター/ゲートウェイの設置工事をする必要があります。
開通工事日の調整に気をとられすぎて、電源工事とサーバーラック設置工事の完了前に、ルーター/ゲートウェイの設置工事を行うスケジュールになってしまいました。
後続スケジュールのこともあり、開通工事日は延期できないため、キャリア側に相談をしたところ、電源は仮設電源、機器設置はラックがある想定でケーブル長を調整する形で工事を実施していただけることになりました。
工事日当日は、延長コードと電源タップを駆使した仮設電源を何とか用意し、工事を予定通り完了させることができました。

学んだこと

移転プロジェクトを通じて、音声系システムの契約内容と構成を完全に理解できたことも良かったのですが、前述の大変だったことから普段の業務では学べないことを学ぶことができました。

見積の内容確認の際は、金額に誤りがないことの再確認の依頼もするようにする

見積の工事単価に誤りはないだろうという思い込みがありました。
未経験なこともあり、見積内容をキャリア側と対面で認識合わせをして、決定した電話回線環境が構築できるか、工事内容に認識違いや過不足がないかの確認ができて満足していました。
今後は、工事単価の見積金額にも誤りがないか確認することを学びました。

発注時の在庫の有無はしっかり確認する・万が一の回避策も用意しておく

見積を受け取り、発注もできた製品なので、在庫はあるだろうという思い込みがありました。
今回は、ヘッドセットとの互換性や必要機能を満たす別機種があったから良かったです。
別機種の在庫がなかったら、旧オフィスの電話機を継続して使用するしかないため課題解決できず「従業員が働きやすいオフィス環境づくりを目指す」ということが実現できないところでした。 今後は、見積と発注のタイミングで確実に納品できる在庫があるのか確認すること、万が一の回避策となる第2案も用意しておくことを学びました。

自分が実施する作業の前提条件をしっかりと確認する

自分が実施する作業と、その前提条件の洗い出しができていませんでした。
実施する作業と前提条件を洗い出した上で全体スケジュールに反映しないと、プロジェクトの進捗管理も正しくできず、プロジェクト全体に迷惑がかかることになります。
今後は実施する作業と前提条件を洗い出した上で、全体スケジュールにはめ込んで、工程管理していくことを学びました。

おわりに

迎えた札幌カスタマーセンター移転後最初の営業日である2021年1月4日。 無事にお客さまからの電話が着信していることを見届け、一安心したと同時にとても大きな充実感がありました。
オフィスが一からでき上がっていく過程に携われたことも、なかなか得られない非常に恵まれた経験をすることができたと思っています。

ふりかえると、学びになったことは「自身の思い込みや考慮不足により問題が発生すると後々になって大変になってしまう」ということで、今現在も良い教訓となっています。

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