はじめに
こんにちは、 @rktm です。
Misocaではプロジェクトを開発プロセスの基本としています。
ですがプロジェクトの枠からこぼれるタスクが増えてきました。 それらタスクをこなすべく、1年ほど前に「遊軍」というチームを作りました。
遊軍チームは当初はお試し運用でしたが価値を継続的に出せており、今は定着しています。 その遊軍チームについて、創設の背景、運用結果について書きます。
前回のブログ記事「フロントエンドチームはじめてました」と合わせて、Misocaでの、問題を個々人の努力だけではなく、組織構造の変化によって解決する事例としてお読みいただければ幸いです。 tech.misoca.jp
遊軍創設の背景:個々人の「余裕」「余力」に頼っていてはこなせないタスクが積み上がってきた
Misocaでは、2018年末ぐらいから大規模な機能追加・改修プロジェクトが複数走り、余裕のない状態が続いていました。
サービスを運営していると、日々お客様からの要望や、マーケティング担当からのリクエスト、不具合・障害の対応、分析作業、リファクタリングなど「 重要度も大きさも緊急度も様々」なタスクが発生します。
大規模プロジェクトに追われていた結果、気づけば以下のようなタスクが山積みになっていました。
- 重要度: 非常に高いわけではないが、無視できるほどは低くない
- 大きさ: プロジェクト化するほどは大きくないが、一人がプロジェクトの片手間でやるには手に余るボリューム
この記事ではこれらを「こぼれタスク」と呼んでおきます。
余裕のない時に起こること1: 「このタスク誰かお願いできますか?」「…(誰も手を挙げない)」
余裕がない状態では、プロジェクトメンバーはプロジェクトの目標やゴール達成に注力するため、プロジェクト外の作業にリソースを割くことに躊躇しがちです。突発的な問い合わせや障害の対応に取り組みづらくなりました。(この時の「誰かやってくれ〜 🙏 」という無言の空気は、なかなかつらいものがあります)
ということで、個々人の余裕に頼るとこぼれタスクの消化は安定しませんでした。
余裕のない時に起こること2:「余裕ができたらやる(やらない)」
「このプロジェクトが終わって余裕ができたらやる」というタスクは、プロジェクトの終了が延びがちであり、その結果次のプロジェクトがすぐに始まるため、結果的に後回しになりがちでした。
ということで、期間で余裕を作ろうとしてもなかなかうまく回らないものです。
解決策としての遊軍チーム: 組織構造として「余力」を作る
上記を踏まえ、Misocaでは個々人に頼ることなく定常的に「余力」を生むべく、遊軍チームを創設しました。
① 待機していて、時機を見計らって出動し、味方を助ける部隊。遊撃隊。 ② 特定の所属や任務がなく、忙しい仕事やむずかしい仕事を状況に応じてする者。 「 -記者」
遊軍が対象とするスコープは以下の通りに定義しました。
- 不具合対応等、突発的なタスク
- お客様サポート部門・マーケティング部門などから上がってきた要望の対応
- プロジェクト化するほど大きくないタスク
- タスクのボリュームは、最大でも2週間ほどで終わるもの。
遊軍とプロジェクトの対比は以下の通りです。
遊軍を運用してどうだったか
チームの規模としては、最低2人、新メンバーの受け入れやプロジェクトの狭間のメンバーの参加などで平均すると3人程度でした。
遊軍がやってきたこと
直近でブログに公開したタスクは以下の通りです。
- 請求書の新規作成時にもテンプレート選択ができるようになりました | 請求書作成サービス「Misoca(ミソカ)」
- 品目の登録・検索のウインドウの表示・非表示を切り替えられるようになりました | 請求書作成サービス「Misoca(ミソカ)」
- 納品書一覧で請求書変換済みの文書がわかるようになりました | 請求書作成サービス「Misoca(ミソカ)」
- 文書の明細数が最大80行まで登録できるようになりました | 請求書作成サービス「Misoca(ミソカ)」
- 合算請求書の明細順を発行日順に変更しました | 請求書作成サービス「Misoca(ミソカ)」
その他にも、
- お客様の要望:文書の件名の最大文字数を40文字から70文字にする(簡単なように見えて、いくつかのPDFテンプレートを変更するなど意外に大変でした)
- 軽微な修正:日付系の入力フィールドにてautocompleteをオフにする
- CIでしばしば失敗するテストを安定させる
- 社内メモの文字数についての調査
- デザイナーチームのビュー変更によりテストが失敗するようになったときも、ヘルプに入って迅速にマージまで持っていけた
などを行ってきました。
(ここに書ききれないような、小さな改善、リファクタリング、他プロジェクトのレビューによる支援など、多くの「こぼれタスク」をこなしています)
遊軍チームを作って、どうだったの?
遊軍内の評価
- 溜まっていたお客様からの要望に対応できるようになり、よりお客様によりそえるようになった
- CIの安定化に貢献することで開発チーム全体のスピードを落とさずに済んだ
- 後回しになりがちな仕様書のアップデートにも時間を割けるようになった(斧を研ぐ時間を確保できている)
- 新しくジョインしたメンバーの受け入れ先として機能している
外からの遊軍の評価
プロダクトマネージャーより
「プロジェクトにするほどでもない大きさの価値を、継続的に提供できるのがとても助かっています。
遊軍はある意味「余力」と捉えられがちで、最初の頃は廃止してプロジェクトにリソースを回した方がよいのでは?という声もありましたが、守ってよかったです」
デザイナーチームより
「長期間をかけて生み出すチームとは別軸で、短期間で価値を提供できるチームが発足し、実際に価値提供の頻度もあがっていると感じています。(リリースのお知らせ数が過去最高になりました)
いつでも相談できる窓口が仕組み化されたことで、細かなデザイン改善でやりたいことが発生した時も迷うこともなく相談でき、とても助かっています。」
マーティング担当より
「未来に向けた大きな取り組みを進めつつも、日々生じる改善や新規要望への対応も止めるわけにいかない。Misocaがその両輪を回すために無くてはならない、『縁の下のスピードスター』みたいなチームです。
こちらからの要望対応だけでなく、「え、そんな改善を進めてくれていたの?」というサプライズもちょくちょくあって、『縁の下のファンタジスタ』みたいなチームでもあります。」
お客様対応(カスタマーセンター)担当より
「これまで製品ロードマップに沿った計画的なリリースが中心とならざるを得ない状況でした。
そのため日々、お客さまからいただく改善要望などがなかなか反映できない(後回し)になる状況でした。遊軍チームが出来たおかげて、順次、機能改善を中心とした要望がリリースされています。
その結果、お客さまからも感謝のコメントをいただいたり、これまであった問合せがなくなったり(問題点が解消)する効果が出ています。カスタマーセンターとしても感謝していますし、何より、お客さまにとっても目に見えて実感できる改善が継続して提供できるような体制ができたことが嬉しいです!」
おわりに
遊軍チーム創設当初の目論見通り、
- 組織構造として余力を作ることで、
- 余力の中で「こぼれタスク」をスムーズに処理する
ということができていると評価しています。
Misocaでは、問題を解決するにあたり、個人の意識や頑張りだけでなく、仕組みや組織の変更で対応したいと思う人を募集しています。