WebディレクターがUXデザイナーにキャリアチェンジした話

この記事は 弥生 Advent Calender 2023 の11日目の記事です。

弥生株式会社の "1000old" です。

他のメンバーに乗っかって好きな勘定科目を挙げると、私は「広告宣伝費」です。
これまではずっと Webディレクター だったので、Web制作費や外注費などはこれで処理されていたのかなと思うと、ときめきを感じずにいられません。

ちなみに、弥生では Webディレクター ではなく UXデザイナー をやっています。
近ごろ、WebディレクターのキャリアアップにUXデザイナーを推す記事などを見かけますが、私の実感ではキャリアアップというよりキャリアチェンジに近い印象です。

私自身、弥生から声がかかるまではUXデザイナーを選択肢としてあまり深く考えていなかったのですが、面接で話を聞くとWebディレクターとしての経験が結構使えるのでは?とアピールしたので今がある、といった感じです。

今回は、同様のキャリアチェンジを考える人の背中を押すべく、実際の状況などをまとめてみます。
一緒に働く仲間が増えてくれたらいいなぁ、という願望も込めて。

バックグラウンド

まず、私のバックグラウンドを簡単にまとめておきます。

  • 情報系学科の大卒でプログラマーを目指すが、派手にバグを出しメンタルと天狗の鼻が折れる。
  • 自社のWebサイト制作をきっかけにWeb業界へ。
  • 当初はWebディレクターの定義自体が明確ではなく、結局全工程を担当できる一人親方状態に。
  • 某レンタルサーバーの管理画面の設計経験があり、UIやUXの基本的な知見はある。

ここからは、Webディレクターに必要と言われる一般的なスキルが、UXデザイナーではどう使えるかという点を中心に整理してみましょう。

調整・コミュニケーション

調整・折衝先がお客様と社内の違いはありますが、どちらも綿密なコミュニケーションを求められます。

コミュニケーション
職種 業務内容
Webディレクター お客様の夢をヒアリングし、予算・工期との折り合いをつけるために、あの手この手で調整する力が求められます。
UXデザイナー 社内とのコミュニケーションが多くなります。
あらかじめPBI(プロダクトバックログアイテム)などで定義された機能を画面に起こしたあと、UXの重要性を粘り強く説明し、エンジニアさんにゴキゲンに仕事をしていただく必要があります。

企画・プレゼンテーション

どのようなアウトプットでプロジェクトを成功に導くのかを考え、見せるという点は、両職種に共通しています。

プレゼンテーション
職種 業務内容
Webディレクター Webサイトの目的や目標から完成形を、どれだけファンタジーに見せられるかにかかっています。
UXデザイナー ユーザーにどんな成功体験をさせるか、サービスの世界観、魅力をどれだけわかりやすく言語化できるかが腕の見せどころになります。

課題抽出・分析・仮説・検証

方向性や成果物は異なる部分があるものの、プロセスや使用する情報、仮説・検証の流れなど、外から見るほど大きな差はないというのが実感です。

分析

なお、ABテストはUXデザイナーが中心と思われがちですが、Webディレクターもテストツールによるコンテンツ出し分け検証を行ったりしますし、CTAボタンの配置やデザインなど、コンバージョンにつなげるためにUX的な観点を取り入れたりします。

職種 業務内容
Webディレクター ターゲットユーザーの分析からデモグラフィックレベルのペルソナ定義、カスタマージャーニーマップの作成などを行います。
そして、解決したい課題から仮説を立て、アクセス状況などをもとにそれを検証し、提供するコンテンツなどを検討、ワイヤーフレームを作成します。
UXデザイナー ターゲットを知るためにペルソナをサイコグラフィックレベルまで深掘りし、画面遷移に沿ったカスタマージャーニーマップを作成します。
そして、ユーザーの成功体験を実現するために仮説を立ててプロタイプを作成し、テスターを使って検証後、さらに改善を進めます。

Web制作・デザインの知見

一緒に仕事をする人にもよりますが、さまざまなバックグラウンドはどこかで必ず活きてきます。

検討過程
職種 業務内容
Webディレクター もともとコーダーやデザイナー経験を持つ人が多いので、ディレクション側に回っても、成果を上げられるアウトプットのクオリティに気を配ることができます。
UXデザイナー コーダー経験があるとエンジニアさんと会話がやりやすくなるし、デザイナー経験があるとピクセル単位での調整の根拠を言語化できるので、説得力が上がります。

スケジュール管理・マネジメント

両職種とも、スケジュールとアウトプットの進行状況に注意を払うことが求められます。

交通
職種 業務内容
Webディレクター 管理系の仕事が大半を占めるかもしれません。スケジュールされた公開日を遅滞なく守るために、進行を管理してメンバーを効率的に動かすスキルが必要です。
UXデザイナー スクラム開発の進行に合わせてアウトプットを準備したり、デザインスプリント1による仮説・検証プロセスの実践するなど、工程全体を俯瞰したマネジメントが必要になります。

使わなくなったスキル

予算管理

Webディレクターは、予算交渉、見積書作成などで地味に時間を削られますが、今はお金の話をすることがなくなりました。

SEO

Webサイト全体のUX改善となると話は別ですが、現在は契約中のお客様に提供する画面を設計しているので、SEO観点でキーワードなどを意識したライティングは不要になりました。

ただ、UX的な観点でターゲットに最適なライティングを心がけるようにしています。

追加で必要なスキル

Figma

これまではWebサイトのページ遷移を見せるだったのでAdobe XDで十分でしたが、プロトタイプを動かしてテストまで、となるとFigmaは欠かせません。私も改めて習得しました。

そもそもAdobeがFigmaを買収し、XDもFigmaに収斂していくので、今後はWebディレクターでもFigmaのスキルは必須になるかもしれません。


【2023/12/22 追記】
本記事公開の約1週間後に、AdobeがFigma買収断念との報道がありました。
終了に向かっていたAdobe XDの今後は不透明ですが、いきなり高機能になって復活することは考えにくいので、Figmaのスキルが必須であることに変わりはありません。

やはりキャリアアップではなくキャリアチェンジだ

ここまでいろいろ書きましたが、WebディレクターとUXデザイナーは、ブラウザでお客様の課題を解決するという根底の部分が同じなので、どっちが上とか下とかではなく、やはりキャリアアップというよりはキャリアチェンジというほうがふさわしいと思います。

アウトプットが「Webサイト」と「Webアプリケーション」の違いがあるので、ゴールに行き着くまでのプロセスは共通する部分も異なる部分もありますが、脳の使い方や比率をちょっと変えることで十分対応は可能というのが私の結論です。

これを見ているWebディレクターさんで、少しでもUXデザイナーに興味があるならば、キャリアチェンジの選択肢に入れて視野を広げてみてはいかがでしょうか。

もくにゃん


弥生では一緒に働く仲間を募集しています。一緒に、進化するチームで働きませんか?

herp.careers


  1. デザインスプリント:製品やサービスなどのアイデア・仮説を短いサイクルで具現化し検証するプロセス。詳細は、同僚のUXデザイナーが『弥生 Advent Calendar 2023』12月21日に掲載予定です。