この記事は 弥生 Advent Calendar 2025 の24日目の記事です。
先日、AI-DLC(AI-Driven Development Life Cycle)の考え方をベースにしたワークショップに参加しました。 本記事ではイベントの感想ではなく、エンジニアとして得られた知見を中心に整理します。
まとめ
- AI-DLCは、権限・スキルを持ったメンバーが集まり、AIの生成物を通して意思決定をするフロー
- AI-DLCは、生成物を見ながら「いったん決めて進む/違えば戻す」を繰り返しやすく、対面での同期的コミュニケーションと親和性が高い
- AI-DLCワークフローは個人でも実施可能で、作業プランをドキュメント化し、チェックリスト形式で生成しておくと、AIを長時間動かしやすい
AI-DLCとは何か(エンジニア視点での整理)
AI-DLCの基本的な流れは、
- ユーザーストーリーを生成
- ユーザーストーリーを並列作業可能な作業単位にまとめる
- 作業計画・タスク分解
- 設計
- 実装
になります。 ※詳細はAI-DLCの公式ページをご参照ください。
私が実際にワークショップで体験して、次の3点が特に印象的でした。
- コードより前段階から始める
- モブワークで即時意思決定ができる
- オフラインで同期的に連携する
1. コードより前段階から始める
AI-DLCでは、いきなり実装に入るのではなく、ユーザーストーリーや要求整理の段階からAIを動かすことを前提にします。
ドキュメント、モック、画面遷移、業務フローといった生成物を叩き台に議論を進める設計です。
ユーザーストーリーからリポジトリ内にドキュメントを作ることで、その後の作業の際にコンテキストの参照が可能になるので、最終成果物の精度が上がるのを感じました。
2. モブワークで即時意思決定ができる
AIが生成したドキュメントをどんどんレビューしていくので、その場で意思決定できる人が参加していることが重要でした。 生成されたドキュメントの良し悪しを判断するのは人間です。参加メンバーが持つ権限やスキルの範囲が広ければ広いほど、生成物レビューのボトルネックが減り、AI-DLCを適用できる範囲が広がります。
3. オフラインで同期的に連携する
複数チームが同じ場にいることで、複数チームに別れてコーディング作業を進める場面でも、事前にチーム間で使用するインターフェースを“完璧”に作り込む必要が減りました。 また、隣のチームの会話が聞こえることで違和感に早く気がつけて調整がすすみます。結果として、チーム間の合意形成コストや手戻りのリスクが下がる手応えを感じました。
実際にやってみて良かったこと
AIの使い方が「一問一答」から「作業の依頼」に変わった
今までは、細かく切ったタスクをAIに依頼し、生成されたコードに対して指示を出し修正していましたが、より大きな範囲で長時間の実行ができるようになりました。
プロンプトの書き方としては、
- タスク実行のためのプランニングから依頼することであらぬ方向に進むのを防ぐ
- ドキュメントを生成し、文脈を保持する
- 成果物をチェックリスト形式にして、進捗と論点を維持
これにより、作業のコンテキストをドキュメント上に維持してタスク実行することで、ブレが少なく・長時間の実行が可能になりました。
モブでの即時意思決定の気持ちよさ
途中経過のドキュメントやモックを即座に生成させることで、認識合わせが短いサイクルで回ります。 以前は、視覚的にわかるレベルの成果物ができるまでのスパンが長く、エンジニア以外を含めたモブワークが成立しにくい場面もありました。 しかし、成果物の視覚化までの速度が上がったことで、モブとしてのフロー効率が出やすくなったのは大きな収穫でした。
難しかったこと・注意点
1. AIを「止めない」運用が意外と難しい
人間同士の議論が盛り上がると、AIの操作が止まりがちになります。
- 明らかにおかしい部分だけ人間が修正する
- 生成結果は一旦受け入れ、前に進む
という割り切りが必要でした。
生成コストが低いからこそ、何度でもやり直せるという前提をチームで共有できるかが、効率面・心理面の両方で重要だと感じました。
2. モブ特有の課題は残る
複数人コミュニケーションの難しさや、専門外の話題で手持ち無沙汰になる問題は、従来のモブワークと同様に存在します。 ここは、ファシリテーションや役割分担など、既存のモブ運用と同様の工夫や習熟が引き続き必要です。
3. オフライン拘束のコストは現実的な論点
長時間対面で集まる場合、意思決定権を持つステークホルダーの確保コストは課題になります。
軽減策としては、
- 時間を分割する
- インセプション(ユーザーストーリーの取捨選択)+モック作成など、要点に絞って参加してもらう
- オンラインでもできる運用を整備する
などが考えられます。
今後に向けて
AI-DLCは、QCDの中でも特にデリバリー(前進の速度)に寄せたフローで、 新規プロダクト/新機能、ディスカバリー、モック開発と相性が良いと感じました。 我々のチームは新しいプロダクトを開発するチームのため、ワークショップ後には、細部の作り込みよりも「使われうるスコープ」を広めに設定して成果物を作成し、ディスカバリーを前に進める判断をしています。
また、検証フェーズだけでなくAI-DLCの開発速度でプロダクトリリースをしていくためには、 DevOpsの成熟度を上げていくことも重要だと感じました。
AI-DLCは新手法というより、これまでの開発を一段先に進めるための現実的な延長線にあるものだと捉えています。 個人でどのような機能に対しても適用可能なので、是非一度試してみてはいかがでしょうか。



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